介護職の退職金はいくら?福祉医療機構の共済と中退共のしくみを比べる
介護の職場の退職金は、社会福祉法人なら福祉医療機構の退職手当共済、中小の事業所なら中退共、または法人独自の制度が土台です。共済の支給例(勤続10年で約115万円など)と、転職したときの通算の条件をまとめました。
この記事の内容
介護の職場の退職金は、社会福祉法人なら福祉医療機構(WAM)の「社会福祉施設職員等退職手当共済」、中小の事業所なら国の「中小企業退職金共済(中退共)」、または法人独自の制度が土台になっていることが多く、どれを使っているかで額の決まり方が違います。
福祉医療機構の共済では、勤続10年・本俸22万円の例で 1,148,400円、20年・28万円の例で 5,724,600円です。退職金は法律で必ず払うものではないため、求人票の「退職金あり」がどの制度なのかを確かめることが出発点になります。
退職金は法律で決まったものではない
労働基準法は、退職手当の定めをする場合に、対象になる労働者の範囲・額の決め方・払い方・支払いの時期を就業規則に書くことを求めています(第89条第3号の2)。退職金を払うこと自体は義務ではなく、制度の有無と中身は勤め先ごとに違います。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」(常用労働者30人以上の民営企業)では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は全体で 74.9%、医療,福祉の企業では **75.5%**でした。退職一時金制度がある企業全体のうち、支払いの準備に中退共を使っている企業は 42.0%(複数回答)です。
福祉医療機構の退職手当共済
対象になる人
社会福祉施設職員等退職手当共済法にもとづく制度で、社会福祉法人が経営する社会福祉施設等・特定介護保険施設等・申出施設等で働く職員が対象です。株式会社や医療法人が経営する事業所は、この制度の対象ではありません。
令和8年4月時点で約88万人が加入し、令和7年度は約8万3千人の退職者に約1,452億円が支給されました。
掛金はだれが出すか
財源は、法人(共済契約者)が負担する掛金と、国・都道府県の補助です。令和8年度の単位掛金額は職員1人あたり 49,500円で、特定介護保険施設等と申出施設等の職員はその3倍です。この2つの区分には、原則として公費の補助がありません。
退職金の額の決まり方
退職手当金は次の式で決まります。
退職手当金 = 計算基礎額(退職前6か月の平均本俸月額で決まる)× 支給乗率(加入期間の年数で決まる)
「本俸月額」は基本給の金額のことです。福祉医療機構が示している普通退職の支給例は次のとおりです。
| 勤続年数 | 退職時の本俸月額 | 退職手当金 | 本俸の何か月分か(目安) |
|---|---|---|---|
| 5年 | 20万円 | 495,900円 | 約2.5か月 |
| 10年 | 22万円 | 1,148,400円 | 約5.2か月 |
| 15年 | 26万円 | 2,697,000円 | 約10.4か月 |
| 20年 | 28万円 | 5,724,600円 | 約20.4か月 |
勤続年数が長くなるほど、本俸の何か月分かが大きく増える仕組みです。受け取れるのは加入期間が1年以上の人で、請求の期限は退職日の翌日から5年間です。
正職員からパートになるとき
雇用契約の終了や、制度の加入要件を満たさなくなった場合は、共済の上では「退職」扱いになります。福祉医療機構の資料には、正職員として20年加入したあとパートになる場合の比較例があります。
| 選び方 | 加入期間 | 退職前6か月の平均本俸月額 | 受け取る額 |
|---|---|---|---|
| 正職員の終わりで請求する | 20年 | 250,000円 | 5,111,250円 |
| 請求してパートで新たに加入し、2年後に請求する(パート分) | 2年 | 130,000円 | 135,720円 |
| 請求せずに加入を続け、パートとして2年後に請求する | 22年 | 130,000円 | 3,110,250円 |
退職前6か月の本俸で計算するため、本俸が下がった後で請求すると、期間が長くても額が少なくなることがあります。
転職したときの合算
退職手当金を請求せずに、退職日から3年以内に別の法人で再び共済に加入すると、前後の加入期間を合算できます(合算制度)。いったん請求すると合算はできません。合算した後の本俸が大きく下がる場合は、合算しないほうが多くなることもあるため、福祉医療機構の早見表やシミュレーションで比べられます。
中退共(中小企業退職金共済)
使える事業所
中退共は、中小企業退職金共済法にもとづく国の制度で、中小企業が加入します。サービス業では常時雇用する従業員が100人以下、または資本金・出資金が5千万円以下の企業が対象で、個人企業や公益法人などは従業員数で判断します。中退共に加入している従業員は、福祉医療機構の共済には加入できません。
掛金と加入する人
- 掛金は全額を事業主が負担し、従業員に負担させることはできません
- 掛金月額は従業員ごとに 5,000円から 30,000円までの16種類から選び、短時間労働者は 2,000円・3,000円・4,000円でも加入できます
- 従業員は原則として全員加入ですが、期間を定めて雇われる人・試用期間中の人・短時間労働者などは加入させなくてもよいことになっています
退職金の額の決まり方
退職金は「基本退職金+付加退職金」で、掛金月額と納付した月数で決まります。
| 掛金を納付した月数 | 退職金 |
|---|---|
| 11か月以下 | 支給されない(通算などの場合を除く) |
| 12〜23か月 | 納付した掛金の総額を下回る |
| 24〜42か月 | 納付した掛金に相当する額 |
| 43か月以上 | 運用利息と付加退職金が加わる |
退職時に60歳以上なら、一時金のほかに5年間または10年間の分割でも受け取れます(額の条件あり)。
転職したときの通算
中退共に加入している企業から別の加入企業に移るときは、掛金が12か月以上納付されていて、前の企業を退職した後3年以内に新しい企業で加入し、退職金を請求していないことを条件に、掛金の納付月数を通算できます。
求人票の「退職金あり」で確かめること
- どの制度か:福祉医療機構の共済・中退共・法人独自の制度・その組み合わせのどれか
- いつから対象か:勤続何年から支給されるか、試用期間中は加入するか
- 雇用の形:パートや有期契約の人も対象か
- 額の決め方:基本給をもとにするのか、掛金の月額はいくらか
給料の毎月の額や賞与と合わせて比べる場合は、介護職のボーナスの平均と介護職の給料の平均もあわせて見ると、年単位の違いが分かりやすくなります。
よくある質問
Q. パートでも退職金は出ますか。 勤め先の制度によります。中退共では短時間労働者を加入させなくてもよい決まりですが、特例の掛金で加入させることもできます。福祉医療機構の共済は、加入の要件を満たすかどうかで決まります。自分が対象かどうかは、就業規則(退職金規程)で確かめられます。
Q. 退職金に税金はかかりますか。 一時金で受け取る退職金は「退職所得」として、他の所得と分けて課税されます。勤続年数に応じた退職所得控除があり、中退共では掛金を納付した期間をもとに控除を計算します。
Q. 退職金が払われないときは、どこに相談できますか。 まず就業規則と退職金規程で、対象の範囲と支給の条件を確かめます。共済の手続きは福祉医療機構や中退共に問い合わせることができ、規程どおりに払われていないと思うときは、事業所を受け持つ労働基準監督署に相談できます。
出典・参考にした一次資料
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介護職/ヘルパーの求人を見るこの記事は、公的な資料をもとにした一般的な解説です。制度・金額・日程は改定されることがあります。実際の手続きや個別の事情については、記事の出典の実施機関や、お住まいの都道府県・市区町村、ハローワーク、労働基準監督署などの窓口でお確かめください。