最低賃金の改定2026|介護の求人票で見直す月給・発効日・固定残業代
最低賃金の改定で介護の求人票を見直すときは、月給を時間額に直した額、発効日をまたぐ掲載、固定残業代の時間数の3点を確かめます。発効日は都道府県ごとに違うため、自分の事業所の発効日から逆算して直します。
この記事の内容
令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で 1,177円(令和7年度は 1,121円)に上がります。介護の求人票では、①月給を時間額に直して新しい額を下回らないか、②掲載中に発効日を迎えないか、③固定残業代の額が表示した時間数に足りているか の 3 点を見直します。
新しい額に変わる日(発効日)は都道府県ごとに違い、2026年10月1日の東京都から、12月2日の沖縄県まで開きがあります。都道府県ごとの額と発効日は 最低賃金の都道府県別の発効日一覧 にまとめています。
見直し1:月給を時間額に直して比べる
月給制の求人は、額面が大きく見えても、時間額に直すと最低賃金を下回っていることがあります。厚生労働省が示す比べ方は次のとおりです。
月給 ÷ 1 か月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金(時間額)
1 か月の平均所定労働時間は、年間の所定労働日数 × 1 日の所定労働時間 ÷ 12 で出します。年間休日が多いほど平均の時間は短くなり、同じ月給でも時間額は高くなります。
計算に入れないもの
月給から次の賃金を除いてから割ります。
- 時間外・休日・深夜の割増賃金(夜勤の深夜割増を含む)
- 賞与など、1 か月を超える期間ごとに払う賃金(処遇改善の一時金を含む)
- 臨時に払う賃金(結婚手当など)
- 精皆勤手当・通勤手当・家族手当
- 固定残業代(時間外の割増賃金にあたるため)
毎月決まって払う処遇改善の手当や資格手当は計算に入ります。 処遇改善を一時金で配っている事業所では、月給が思ったより低く出ることがあります。書き分けは 処遇改善加算は求人票にどう書くか をご覧ください。
計算の例
東京都(令和8年度 1,280円・2026年10月1日発効)で、1 か月の平均所定労働時間が 160 時間の事業所の場合、最低賃金に届く月額は次のとおりです。
| 項目 | 令和7年度(1,226円) | 令和8年度(1,280円) |
|---|---|---|
| 最低賃金 × 160 時間 | 196,160円 | 204,800円 |
「基本給 185,000円+資格手当 10,000円+処遇改善手当 5,000円=200,000円」の求人は、200,000 ÷ 160 = 1,250円 で、令和7年度の額は上回っていても、令和8年度の 1,280円 は下回ります。発効日より後に採用する人がいる限り、額を上げる必要があります。
同じ月給でも、1 か月の平均所定労働時間が 150 時間なら 200,000 ÷ 150 ≒ 1,333円 で、下回りません。所定労働時間を必ず自分の事業所の就業規則の値で計算する ことが大切です。
時給・日給の求人
時給の求人は、そのまま新しい額と比べます。日給の求人は、日給 ÷ 1 日の所定労働時間 で比べます。時給・日給と月給の手当を組み合わせている場合は、それぞれ時間額に直して合計します。
見直し2:発効日をまたぐ掲載
発効日から逆算して直す
最低賃金は、発効日からの労働に新しい額がかかります。求人票を出した日には上回っていても、採用する人が働き始める日が発効日より後なら、新しい額を上回っている必要があります。
ハローワークの求人の有効期限は、原則として受理した月の翌々月の末日です(例:9月1日に受理した求人は 11月30日まで)。掲載している間に発効日を迎える求人は、発効日の前に額を直して出し直すか、新しい額を上回る額で出しておく のが確実です。
求人の情報は最新に保つ
職業安定法第5条の4第2項は、求人を出す人に、募集の情報を正確で最新の状態に保つよう求めています。発効日の後に最低賃金を下回ったままの求人を載せ続けることは、この点からも問題になります。
また、職業安定法第5条の6により、ハローワークなどは法令に違反する労働条件の求人の申込みを受理しないことができます。最低賃金を下回る求人は、受理されない、または直すよう求められることがあります。
「〇年〇月時点」の記載
求人サイトや自社サイトの募集要項には、いつ時点の条件かを書いておくと、改定の前後でどちらの額か分かりやすくなります。発効日の後に賃金を改定する予定がある場合は、「2026年11月16日から時給 1,200円」のように、改定後の額と日付を書き添えることもできます。
見直し3:固定残業代の額と時間数
固定残業代(一定時間分の時間外手当を定額で払う手当)がある求人は、基本給が上がると見直しが必要です。時間外の割増賃金の単価は基本給などから計算するため、基本給を上げると 1 時間あたりの割増額も上がり、手当の額のままでは表示した時間数に足りなくなる ことがあります。
計算の例
1 か月の平均所定労働時間 160 時間、固定残業代「20 時間分」の求人で、基本給を最低賃金に合わせて上げた場合です(計算を分かりやすくするため、割増の単価の基礎を基本給だけとしています)。
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 基本給 | 196,160円 | 204,800円 |
| 1 時間あたりの賃金 | 1,226円 | 1,280円 |
| 時間外の単価(×1.25) | 1,532.5円 | 1,600円 |
| 20 時間分の固定残業代 | 30,650円 | 32,000円 |
基本給だけを上げて、固定残業代を 30,650円 のままにすると、30,650 ÷ 1,600 ≒ 19.2 時間分にしかなりません。「20 時間分」と表示したままだと、表示と実際がずれます。基本給を上げるときは、固定残業代の額か表示する時間数のどちらかも直します。
固定残業代を表示するときは、基本給・固定残業代の額と時間数・超えた分を追加で払うことの 3 点をそろえて書きます(介護の求人票の必須項目 を参照)。
介護の求人で見落としやすいところ
夜勤手当
夜勤手当のうち、深夜(午後10時〜午前5時)の割増にあたる部分は最低賃金の計算から外れます。夜勤の回数で月給が大きく見える求人でも、日勤の部分の時間額が最低賃金を下回っていないか確かめます。夜勤の組み方は 夜勤専従の募集と求人票の書き方 にまとめています。
訪問介護の時間給
訪問介護で、身体介護・生活援助の時間と移動・記録の時間で単価を分けている場合も、全ての労働時間を合わせて最低賃金を下回らないことが必要です。考え方は 訪問介護の移動時間と賃金 をご覧ください。
試用期間
試用期間中も最低賃金はかかります。都道府県労働局長の許可を受けた場合に限って減額できる特例がありますが(最低賃金法第7条)、許可を受けずに試用期間中の額を最低賃金より低く書くことはできません。
働く場所の都道府県
かかるのは、働く事業所がある都道府県の最低賃金です。複数の都道府県に事業所を持つ法人が同じ額で求人を出す場合は、額がいちばん高い都道府県、または発効日がいちばん早い都道府県に合わせて確かめます。
見直しの手順
| 順 | すること |
|---|---|
| 1 | 事業所がある都道府県の新しい額と発効日を確かめる |
| 2 | 就業規則から 1 か月の平均所定労働時間を出す |
| 3 | 掲載中・掲載予定の求人の月給から除く賃金を引き、時間額に直す |
| 4 | 固定残業代がある求人は、改定後の単価で時間数を計算し直す |
| 5 | 発効日より前に、ハローワーク・求人サイト・自社サイトの全ての掲載を直す |
| 6 | 今いる職員の賃金も同じ基準で確かめる |
都道府県ごとの介護職員の賃金の統計と最低賃金を並べて見る場合は、都道府県別 介護職員の給料と最低賃金 が使えます。
よくある質問
Q. 発効日の前に採用する人の求人も、新しい額に直す必要がありますか。 発効日より後の労働には新しい額がかかります。発効日の前に働き始める人でも、発効日からは新しい額以上を払う必要があるため、求人票も新しい額を上回る形にしておくのが確実です。
Q. 月給が最低賃金を下回ったまま契約した場合はどうなりますか。 最低賃金を下回る賃金の定めは無効になり、最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。差額の支払いが必要になるので、分かった時点で直します。個別の扱いは、事業所を受け持つ労働基準監督署に相談できます。
Q. 年間休日を増やすと、最低賃金との比較はどう変わりますか。 年間の所定労働時間が減るため、1 か月の平均所定労働時間も短くなり、同じ月給でも時間額は高くなります。ただし、求人票の休日の数と就業規則の休日の数を必ずそろえてください。
出典・参考にした一次資料
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事業所の求人を出す(無料)この記事は、公的な資料をもとにした一般的な解説です。制度・金額・日程は改定されることがあります。実際の手続きや個別の事情については、記事の出典の実施機関や、お住まいの都道府県・市区町村、ハローワーク、労働基準監督署などの窓口でお確かめください。